「トランス脂肪酸は体に悪い」と聞いたことがある人は多いかもしれません。でも、その“悪さ”はどれほど深刻なのか、実はあまり知られていないのが現状です。
この記事では、トランス脂肪酸の構造と健康への影響、摂取によるリスク、注意すべき食品について、国内外の研究結果をもとにわかりやすく解説します。
トランス脂肪酸とは?
トランス脂肪酸(Trans Fatty Acids)とは、主に**油脂を加工する過程(部分水素添加)**で生成される脂肪酸の一種です。
化学的には、「不飽和脂肪酸の一種でありながら、分子構造が直線的で飽和脂肪酸に似た特性」を持つのが特徴です。
この性質により、常温で固まりやすく、酸化しにくい=長期保存ができるため、食品業界で重宝されてきました。
トランス脂肪酸はどこに含まれている?
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マーガリン、ショートニング
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ファストフード(揚げ物、フライドポテト)
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スナック菓子、ビスケット、ケーキ
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パン類(特に市販の菓子パン)
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一部のインスタント食品
※ただし近年では、多くの企業が「トランス脂肪酸フリー」商品に切り替えつつあります。
トランス脂肪酸がもたらす健康リスク
① 心血管疾患のリスク増大(エビデンス最強)
トランス脂肪酸は、悪玉コレステロール(LDL)を増やし、善玉コレステロール(HDL)を減らすことが数多くの研究で確認されています。
🧠 ハーバード大学の研究(Willett et al., 1993)
トランス脂肪酸の摂取量が多い群では、冠動脈疾患の発症リスクが約2倍に増加。
✅ WHO(世界保健機関)
「トランス脂肪酸の摂取は、年間50万人の心血管死の原因になっている」と指摘。2023年までに世界的な“禁止”を目指すと発表。
② 炎症・糖尿病・肥満のリスク
トランス脂肪酸は慢性的な炎症を引き起こすとされており、以下の病気と関連しています:
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インスリン抵抗性の増加(2型糖尿病のリスク上昇)
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内臓脂肪の蓄積
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肝機能異常
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認知症リスクの増大
🧬 研究報告(Kavanagh et al., 2007)
ラットにトランス脂肪酸を継続投与したところ、肝臓に脂肪が蓄積し、糖代謝異常が進行したと報告。
③ 妊娠・発育への影響
妊娠中のトランス脂肪酸摂取は、胎児の成長や脳神経の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。母乳にも移行することがわかっており、乳児の発育リスクにも注意が必要です。
日本人のトランス脂肪酸摂取量は?まだ安心できない理由
日本では欧米に比べて摂取量は少ないとされますが、一部の加工食品・菓子類では高濃度の含有が今も確認されています。
⚠️ 農林水産省の調査(2015年)
市販のパイ・クッキー・クリーム類において、1食あたり1.5g以上のトランス脂肪酸が検出されたケースも。
なお、WHOが推奨する**「1日の総エネルギー摂取の1%未満」=約2g以下**という基準を超えることも、珍しくありません。
トランス脂肪酸を避けるための対策
✅ 食品表示を見る習慣をつける
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「部分水素添加油脂」「ショートニング」「マーガリン」が原材料にあるか要確認。
✅ 手作り・自然食品を選ぶ
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自炊での植物油(オリーブオイルやアボカドオイル)使用がおすすめ。
✅ 外食・市販品は頻度を調整
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スナック菓子・菓子パンは“たまに”に抑えよう。
まとめ|トランス脂肪酸のリスクを正しく理解して、賢く避けよう
トランス脂肪酸は、便利で美味しい加工食品の裏側に潜む“見えないリスク”です。
少量でも長期的に摂取することで、心臓病や糖尿病、認知症など重大な健康リスクを招く可能性があると、国内外の研究で明らかにされています。
日本では規制が緩やかなため、「自分で選んで避ける」意識が何より大切です。今日からできる一歩として、まずは食品表示を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
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